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My ORDINARY vol.4 〜寝間着姿のおばあちゃんとお好み焼き〜
SEKAI HOTEL Fuseフロントの斜め後ろにある 老舗のお好み焼き店「しげ美」。
布施のまちでお好み焼きを作り続けて50年。2代目店主の山下おばあちゃんが、祖母にあたる“しげ美”さんから受け継ぎました。
開店当初は布施の駅前に店を構え、8人のスタッフでもお店が回らないほどの大盛況だったそう。
今は布施駅から少し離れたみやこまち商店街を1本入った路地沿いににお店を移し、のんびりと営んでおられます。
いつも夕方の6時ごろになると店先にゴミを出しに来るおばあちゃん。
ある時、
「おばあちゃん、お好み焼き食べに行きたいんやけど、夜はやってないん?」
と尋ねてみると
「もう歳やからこの時間はもう眠いねん。4時までに来てくれたらおいしいの作ったるで!おやすみなー。」
とだけ告げ、店舗兼お住まいに帰っていってしまいました。
午後6時。帰っていく後ろ姿をよく見てみると、おばあちゃんはもう寝間着姿でした。
翌日14時ごろにお店に行くと、おそらく常連さんであろう年配の方と入れ替わりで入店。
店内はコの字になったカウンター席だけで、全ての席の前に鉄板がついており、壁に立てかけた本棚には色あせた漫画がぎっしり並んでいます。
「こんにちはー! お好み焼き食べに来たで!」
「あぁほんまに来たんかいな、好きなとこ座りぃ。何にする?」
「んー何にしよ、何がええかな、普通のやつにするわ。」
「普通のやつでええんか! 分かった分かった。ちょっと待っとってな。」
隣で履物屋を営んでいるおじいちゃんがその声を聞きつけて、茹でたてのまだ熱そうなトウモロコシ片手に登場。
「あんたそのトウモロコシ半分あげたら?」
「せやな。切って半分あげよか。」
「食べにくいやろから実の部分とってあげたら?」
本人たちは声を潜めているようでしたが、全て丸聞こえだったので、
「いいんですか?そのままで大丈夫ですよ! ありがとうございます!」
「そか、ほんなら半分に切ってあげるわな。」
とおじいちゃん。
手元にあった小さく年季の入った包丁でサクッと切って、渡してくれました。
そうこうしているうちにおばあちゃんが世間話をしながら目の前でお好み焼きを手際よく焼いてくれました。
焼きながらたわいもない話をたくさんしました。最近店の前に子猫がたくさん住み着いていること、その子猫におじいちゃんが餌をやることに困っていることを、全く困った素振りを見せず、むしろ楽しそうに話すおばあちゃん。
あーだこーだと話しながらも、手際よくあっという間に綺麗なお好み焼きができあがりました。
「はい、できた。食べ!」
「いただきます!」
気さくで明るいおばあちゃんが作るお好み焼きはまさに大阪のお母さんの味そのもの。
とは言え僕の母は大阪の出身ではないので、きっとお母さんが大阪の人だったらこんな味なんだろうなぁと想像を膨らませながら、おいしくいただきました。
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昭和風情の残る店内で食べる50年変わらない味と、おじいちゃんおばあちゃんの飾らない会話はどこか懐かしく、また帰ってきたい気持ちにさせてくれます。
皆さんもぜひ、おばあちゃんが眠たくなる前に訪れてみてください。
運がよければ、おじいちゃんからのおすそ分けももらえるかもしれません。
Written by Koki Mitani
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-My ORDINARYとは-
地域の人々とSEKAI HOTELスタッフとの日常=ORDINARYをスタッフ個人が綴る連載企画。
地域の人との飾らないありのままのコミュニケーションや情景を感じて、少しでも旅先の日常を感じてみてください。