誰かとすれ違って、湯けむりの向こうに声が聞こえる。銭湯って、本来そういう場所だった気がする。
ただ身体を洗うだけじゃなくて、町の時間を共有する場所。日々の暮らしのそばにあって、気づけばまた来てるような——そんな空気が、今も息づいているのが「戎湯(えびすゆ)」だ。
昭和33年から、変わらず薪で湯を沸かし、変わらず人の気配を受け入れてきたこの場所は、懐かしさとあたたかさがちょうどよく混ざり合っている。
住所 | 大阪府大阪市生野区小路東1-20-6GoogleMap |
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電話番号 | 06-6751-4353 |
営業時間 | 13:30〜23:30 ※23:00までにご入館いただく必要がございます。 |
定休日 | 水曜日 |
SEKAI PASS特典 | ・入浴料無料(銭湯付きプランご予約の方) ・シャンプー類無料(お一人様ひとつずつ) |
その暖簾の向こうには、町のリビングがある
夕暮れどき、風に揺れるのれんをくぐると、「いらっしゃいませ」のチャイムが鳴る。
戎湯の前には、今日もたくさんの自転車。
買い物帰りの主婦、作業服のままの男性、学校帰りの学生。
ここは“町のリビング”みたいな場所で、それぞれが自分の時間を持ち寄る。
昭和33年に創業。
目と鼻の先にある神社、戎神社こと商売繁盛の神様の名前をもらった銭湯は、たしかにこの町で長く繁盛している。
そして、今ではSEKAI HOTEL Fuseの“大浴場”としても使われている。
湯気の中に、昔と今がまざりあう
浴室に入ると、そこには時が止まったような空間がある。
赤と青のボタンが並ぶ蛇口。タイルの壁。年季の入った木製のロッカー。
そして、80年代スタイルのコイン式マッサージチェアに、お釜型のドライヤー。
10円玉を入れて回すヘアドライヤーなんて、今じゃなかなか見ない。
知らない人には新鮮で、知ってる人には懐かしい。
この銭湯の中には、「ああ、これこれ」っていう記憶の断片が詰まってる。
常連のおばあちゃんが教えてくれるから、初めてでも大丈夫。
「熱いで〜、気ぃつけや」って、ちょっと笑いながら。
芯からあたたまる理由
戎湯の裏手に回ると、大量の薪が積み上げられている。
そう、この銭湯、今もなお“薪”で湯を沸かしているのだ。
その薪は、近所の工場や作業場で出た廃材を集めたもの。
町の中で出たものが、町の人を温める。
そういう循環も、ここではあたりまえのように続いている。
ガスや電気のボイラーじゃなく、煙突から立ちのぼる煙のにおいが、どこか安心するのは、
たぶん“手間をかけてる”ことが肌で感じられるからかもしれない。
SEKAI HOTEL Fuseでは、“銭湯付き”で。
SEKAI HOTEL Fuseに泊まるなら、「銭湯付きプラン」もおすすめだ。
フロントで頼めば、オリジナルのお風呂桶も借りられる。
桶にタオルを入れて、銭湯までてくてく歩く道すがら、
知らない町の知らない景色が、ちょっとだけ自分のものになるような気がする。
常連さんに「それ、ホテルのやつか?」なんて声をかけられたりして、
いつの間にか、町の輪の中に混ざっている自分に気づく。
旅行者じゃなく、この町に住んでるような目線になれる。
湯あがりに飲む、冷たい瓶がたまらない
風呂上がりといえば、やっぱり「一杯」。
番台の横には、冷蔵庫がひっそりと置かれていて、
瓶のコーヒー牛乳、フルーツオレ、コーラ、ジンジャーエール…
どれも冷え冷えで、ラベルのレトロなデザインもまたたまらない。
一気に飲み干すと、体の芯まで冷えていくようで、
でも、その後にくるポカポカの余韻がまた心地いい。
暖簾を出ると、町には夜風が吹いていて、
なんでもない日が、少しだけ特別な一日になる。
ひとりの湯じゃ届かない、あたたかさがある。
戎湯は、何も変わっていないようでいて、ちゃんと町と一緒に歩いてきた場所だ。
ネオンサインが灯り、薪が燃え、チャイムが鳴る。その繰り返しが、何万回も続いてきた。
家に風呂がある今、ひとりで湯に浸かるのもいいけれど、
誰かと同じ湯気の中で、同じ時間を過ごすことには、やっぱり特別なあたたかさがあると思う。
旅の中で、もしここを訪れることがあったなら、
“町の暮らし”にふっと混ざるような感覚かもしれない。