「布施で商売できたら大したもんや。」
東大阪一の繁華街である布施商店街ではお馴染みのコメントである。
この街では「お金を払うお客さんが商売人」であり、認められれば名店への道が開けるが、中途半端な商いをしていては、たちまち立ち行かなくなるのだ。
餅屋から、甘味処、おうどん屋さんと時代に合わせて姿を変えてきた『大黒堂』。
多くの商売人を虜にしてきた秘訣に迫りたい。
労働者のパワー源。力うどん
東大阪市はものづくりのまち。事業者密度が日本No.1と町工場が多いまちです。
力仕事の労働者にとって、短時間で食べられてお腹が満たせる、力の源となるのが、『大黒堂』の「かっちんうどん」です。
関西では定番のお餅が入った、ボリューム満点のおうどんです。
ダシはすこし塩気が強くさっぱりと。いわゆる関西の「かつお甘めダシ」とは一味異なり、新鮮です。
また、熱々を食べたい人には具沢山の「鍋焼きうどん」もおすすめ。
ぐつぐつと煮込まれたお鍋の中には、半熟卵・蒲鉾・どんこ椎茸・エノキ・葱・厚焼き・鳴門に加えて、やっぱりお餅も。
昔ながらのこの1人用のアルミ鍋は、より美味しく感じられるから不思議です。
隠れた人気メニューは、ビーフライス!?
多様なメニューの中に見慣れない「ビーフライス(740円)」の文字…
実はこれが隠れた人気メニューなんです。牛バラ肉と玉ねぎを炒めたピラフのようなもの。
ケチャップとウスターソースの甘じょっぱい、シンプルな味付けがいい。実家で出てくるお昼ご飯のようで、なんだか懐かしく、時々無性に食べたくなる味です。
創業101年、餅屋として創業
大黒堂は、1923年創業。今年(2024年現在)でなんと創業101年です。
店内には、白黒の創業当時のお写真が飾られており、歴史を感じさせられます。
まだ商店街にアーケードがなかったころ、店前に木箱が2階まで届きそうなほど並べられたお写真が。実は大黒堂は、元々お餅屋さんとして創業しました。
その後、ぜんざいやおはぎなど甘味処としても事業を展開。さらにはおうどん屋さんとなりました。
関西・大阪では、このようにお餅やさんであった店舗が現在、おうどんやさんに転業・兼業するお店が多いんです。関西の有名チェーン店「力餅食堂」も同様ですね。
餅屋は季節や行事に合わせて餅を提供していましたが、需要は限られていました。
一方で、うどんは日常的に食べられる料理であり、需要が安定していたことから、餅屋がうどんを提供するようになる事例が多いようです。
昔から続く、甘味で休憩も。
創業当時から続く、甘味も外せません。手書きイラストのポップが温かく、ついつい食べたくなってしまいますね。
やっぱり定番は、黄金餅(こがねもち)
シンプルにお砂糖醤油で。黄金色に照り輝いたお餅は食欲をそそります。
やはり「餅は餅屋」。市販の真空パックのお餅とは、噛みごたえが異なります。餅米のつぶつぶ感が残る、ずっしりとした重さのあるお餅はこれだけで腹持ちも抜群です。
伝統のぜんざい
「甘味処のぜんざい」という響きだけで惹かれてしまいます。付け合わせの塩昆布がまた、箸休めにちょうどいい。あずき餡だれも甘ったるくない程よい甘さでお餅自体の味を引き立てます。
おはぎ
おはぎはお土産にもピッタリ!店前に貼られた手書きの力強い文字はついつい足を止めてしまうこと間違いありません。
年始のお餅は大黒さんで。
食堂としても日頃から賑わう大黒堂ですが、最も忙しいのは年末。本業である餅屋としての営業です。
先ほどの創業当時のお写真のように、店前に伝統の木箱が連なります。木箱の中からは、綺麗に整えられたまあるいお餅が、ぎっしりと。
大阪ならではの桜海老が練り込まれた、縁起のいい赤い「エビ餅」もこの時期のみの販売で見逃せません…!
日常から、特別な行事ごとにも布施の人々の生活に根付く、大切な老舗餅屋「大黒堂」。
3時のおやつの休憩や、ガッツリ食べたいお昼ご飯にぜひ立ち寄ってみてくださいね。